神様修行はじめます! 其の四
お岩さんはキョトンとして桜を見つめる。
「これを・・・わたくしにくださるの?」
「うああ~~うぅ」
しま子の手の中の桜の枝は、根本がギザボロ。
たぶん、そこら辺の桜の木の適当な枝を、力任せにボッキリとへし折ったんだろう。
・・・あの、しま子それ、立派な自然破壊なんですけど・・・。
お岩さんの目が、桜からしま子へと移る。
しま子の大きな丸い目が、無くなりそうなほど細められた。
二本の牙の生えた鬼の口が、ニコぉっと優しく微笑む。
「ああうぅ、うあ~~ぁ」
何度も繰り返し、一生懸命にお岩さんに話しかけるしま子。
ぜんぜん言葉になってない鬼語だけど、あたしにはちゃんと聞き取れた。
『元気、だしてね』
・・・優しいしま子は、傷付いた人の心をいつも敏感に読み取るから。
精一杯の真心で慰めようとしてくれる。
悲しむ人の味方になろうとする。
そして差し出される花。温かい笑顔。
「・・・・・・・・・・・・」
お岩さんの目の周りと鼻の頭が、じんわりと赤く染まった。
そしてしま子から桜の枝を受け取る。
「ありがとう。しま子」
胸元にギュッと薄桃色の枝を抱く彼女は、しま子に負けないぐらい素敵な笑顔だった。
その笑顔を瞬時に引き締め、宣言する。
「みんなで行きましょう。島へ」
さあ、行こう。
目指すは常世島だ・・・・・・!
お岩さんの声を合図のように、あたしたちは一斉に宝船へと向かって駆け出した。