神様修行はじめます! 其の四

オロオロするあたしを、この男はじっと黙って見つめている。


それこそ、顔に穴を開けられそうなくらい。


あまりにも強い視線で射抜かれて、こっちの視線もそらせない。


緊張で、まばたきすらできない。



うわヤバイ。目ぇ乾燥してきたぞ。


それに気まずい。死ぬほど気まずい。


このまま睨めっこしてたら息が詰まる。


なにかここで気の利いたひと言でも言って、空気を変えなきゃ。



「あの・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・」


「あ・・・の・・・」


「・・・・・・・・・・・・」


「あの、初めまして。私、天内ですけど・・・あなたも天内さん?」



―― シーーーーーン・・・



周囲の空気が、あたしのひと言で一気に残念ムードに染まってしまった。


あたしは顔を赤くして怒鳴り散らす。


「な、なによ! なんか文句あんのっ!?」



なに勝手に期待してたのよあんたらは!


普通、初対面の挨拶なんてこんなもんでしょ!?


まずは自分で名乗って、それから相手の名前の確認。


最低必要条件は、ちゃーんと満たしてるじゃんか!



「ぶわっはっはっはっ!」


カラリとした豪快な笑い声が響いた。


目の前の男が、腹を抱えて大声で笑ってる。


そして・・・


「お前、気に入ったぜ!」


そう言って、ニカッと真っ白な歯を見せて笑った。

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