神様修行はじめます! 其の四
「あんたが噂に聞く、権田原の名物当主かい? 一度会いたいと思っていたんだよ」
主さんはルビーのような目で、お岩さんのドレス姿をしげしげと見上げる。
そして感心したように言った。
「まあ、噂通りの娘だねぇ。期待を裏切らないね、こりゃ」
「お岩さん、この主さんがね、お岩さんを治療してくれたんだよ」
「んまあぁ! 美しいだけでなく、そんな特技も持っているなんて素晴らしいヘビですわ!」
お岩さんは目をキラキラ輝かせて興奮している。
どうやら主さんの存在は、彼女のツボに激ハマリしたらしい。
「わたくしの命の恩人に、ぜひお礼をしなければなりませんわ!」
「おや、義理堅いねぇ。感心な娘だね」
「わたくしがあなたに、特別に名を進呈してさしあげます!」
「・・・・・・名前?」
主さんがピリッと反応する。
げっ? ヤバヤバ! ちょ、ちょっとお岩さん!
主さんにとっては、名付けはお礼どころか嫌がらせ以外のなにものでもないんですけど!
「そんなもん、ごめんだよあたしゃ!」
「クリスティーヌ! あなたは今日からクリスティーヌですわ!」
「栗捨てぬ・・・って、なんだいそりゃ! あんたあたしにケンカ売ってんのかい!?」
「恥ずかしがることはちっともありませんわ!」
「充分に恥ずかしい名前なんだよ!」
「お、お岩さん、ほんとにすっかり元通りになったね・・・」