神様修行はじめます! 其の四

ふと気づくと、絹糸が彼の手にベシベシと猫パンチを食らわしている。


「ええい! 年頃の娘に対して、何となれなれしい! 手を離せ!」


「なんだあ!? この猫しゃべってるぞ!」


「離せと言うておろうが!」



そ・・・そうだ。


あたし門川君の目の前で、他の男に手を握られてる!


「やだ、ちょっと離してよ!」


慌てて手を引っ込めようとしたけど、離してくれない。



「恥ずかしがるなよ、オレの嫁」


「恥ずかしがってない! 嫌がってるの!」


「なにが嫌なんだ? オレの嫁」


「ヨメヨメ連呼するな! あたしの名前は嫁じゃない! 里緒よ!」


「里緒、か。良い名だなあ。可愛いお前によく似合っている。さすがオレの嫁」


「か、可愛いって・・・!」


「お前は名前も姿も、全部が可愛いんだな」



―― かああぁぁぁ・・・!


頭と顔に、同時に血がのぼった。


か、門川君が、すぐそこにいるってのに、この男・・・!



顔がジリジリ火照って、額にドッと汗が噴き出てくる。


恥ずかしいのかムカついてるのか、もう頭の中がゴチャゴチャだ。



「離せって言ってるでしょ!?」


手を振り払い、立ち上がろうとした時、ビリビリッと足に衝撃が走った。


下半身が別の生き物みたいに痙攣してる。



しまった。正座のせいで足がしびれた!


急に動いたせいで筋肉が悲鳴を上げてる!


ぎゃああ! も、悶絶~~!



あたしはそのまま、彼のヒザの上にガバァッと倒れ込んでしまった。


ひいぃぃーーーーー!


足が・・・足が・・・動かないよぉーー!!

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