神様修行はじめます! 其の四
「今まで本当にごめんね。それと、船では助けてくれてありがとう」
「あなたの勇姿は忘れませんわ」
ヘビ少女は大きな目で、あたしとお岩さんを見比べている。
そして浄火を切なそうにじっと見つめていた。
ようやく決心したように、こちらを向いたままスルスルと海へ向かって後退し始める。
「元気でね、ヘビ少女!」
「できることなら、またお会いしたいですわ」
「達者でお暮しよ。それと、くれぐれも人間は襲うんじゃないよ?」
あたし達は手を振りながら、それぞれヘビ少女へ別れの言葉をかける。
ヘビ少女は、少しずつ後退しては立ち止まりながら海へ向かって行く。
まるで名残りを惜しむように、ゆっくり、ゆっくり。
ようやく下半身が海に浸かるほど進んだけど、そこから一歩も動かなくなってしまった。
辛そうな表情で、浄火の事を食い入るように見つめ続けている。
よほど別れたくないんだろうな・・・。
それまで何も言葉をかけなかった浄火が、そこで初めて口を開いた。
「じゃあな、ヘビ女。・・・なんだか妹ができたみたいだったぜ」
「・・・・・・・・・・・・!!」
ヘビ少女の体が、ひくんと大きく震えた。
唇をキュッと強く結び、見開かれた両目が赤く潤む。
キラリと光る雫が、ホロリと頬を伝って・・・
ヘビ少女は、思い切ったように海の中へと消えていってしまった・・・。