神様修行はじめます! 其の四
「なんだっつーのよ、ふん! ちょっと誰か塩まいてやれ塩ぉ!」
シッシッと手を振るあたしの耳に、島民たちのヒソヒソ話が聞こえてくた。
「この嫁、男を簡単に手玉にとりやがったぞ?」
「すげえな、おい・・・」
・・・・・・え゛?
気付けば、完全にビビッた視線に取り囲まれている。
あたしは急いで両手を後ろに回し、エヘヘッと愛想笑いをした。
・・・やばい。旅先では現地の人とのトラブルは避けるのが鉄則なのに。
反射的に護身術を見事にキメてしまった。
「あっちの女って全員こんな凶暴なのか?」
「これでも女? 信じられない。これじゃ浄火が気の毒だわ・・・」
「し、失礼ね! 凶暴ってなによぉ!」
知らないの!? これはね、戦闘技術じゃなくて護身術!
か弱い乙女が乱暴者から身を守るための、テクニックなんですからね!?
「別に足腰立たないほどタコ殴りにしたわけじゃあるまいし、あんな程度で・・・」
「タコ殴り!? あんた日頃から男をタコ殴りにしてるのか!?」
「骨が砕ける音が好き♪ とか!?」
「相手を半殺しにするのが快感です♪ とか!?」
「ひ、人のこと血に飢えた殺戮者みたいに言わないでよ!」
「おーい、いいかみんな。里緒は怒ると火をつけるからな? 気を付けないとお前ら死ぬぞ?」
「ちょっと浄火! 火をつけるって、放火犯でもあるまいし!」