神様修行はじめます! 其の四
目に映るものと、信じたいもの
「やっぱ浄火ってさ、どっか勝海舟っぽいよね」
「カツカイシュー? なんだそりゃ?」
「勝? ・・・おやまあ! あんた勝のヤツと知り合いだったのかい!?」
足元をスルスルと進んでいた主さんが驚いたような声を上げ、首を持ち上げた。
「へ? あ、いや、知り合いってわけじゃないですけど」
「こりゃ驚いたねぇ! あたしも勝のヤツとは見知った仲なのさ!」
「・・・はあぁぁーーーーー!?」
あたしは思わず目を剥いて叫んだ。
主さんが勝海舟と・・・知り合いぃー!?
そ、そっちの方がよっぽどビックリな事実なんですけど!?
「あたしの正体はバラしちゃいなかったけどね。気まぐれに少しの間、普通のヘビのふりして一緒にいたのさ」
「それホント!?」
「咸臨丸、とかいう船に乗ってね、メリケン国まで行ったんだよ」
「メリケン国ってアメリカだよね? それってまさに万延元年遣米使節じゃん!」
うわ、うわ、うわ! 歴史の生き証人が目の前にいる!
うわあぁ、すごいーーー!
「嵐には遭うし、大変だったよ。じょん、とかって名前の男が実に良く働いてくれたさ」
「それってジョン万次郎!? 主さんってすごい!」
「ふふん。あたしゃこう見えてねぇ、時代の最先端を知るヘビなのさ」
いや、さすがに幕末は最先端とは言わないけど・・・。