神様修行はじめます! 其の四
―― ガバアッ・・・!
マンモスがついにその大きな前足を振り上げた。
恐れていた事態が現実になり、あたしは青ざめる。
興奮が抑えきれなくなって、無意識にあたしを踏み潰そうとしてる!
(シャレにならないー!)
死にもの狂いで逃げ出そうと両手両足をバタつかせた。
なのに、さんざん痛めつけられたあたしの体はちっとも動いてくれなかった。
ああ・・・足が、あたしの頭上に・・・!
「り、里緒ーーー!」
取り乱した浄火の叫び声が聞こえた。
滅火の力は・・・・・・だめだ、間に合わない!
閉じることも叶わない両目が、無慈悲に迫る巨体を映し続ける。
現実味が薄いせいか不思議と恐怖は感じなかった。
この一瞬の後、自分がどんなになってしまうのか。
チラリとだけ浮かんで、そして・・・・・・
あたしの頭はすぐ、あの面影で一杯になった。
銀縁のメガネ。
切れ長の二重と、綺麗に澄んだ瞳。
冬の早朝の空気のように、凛と張った清々しい匂い。