神様修行はじめます! 其の四
「里緒、里緒しっかりしろ!」
あたしの肩はガクガクと何度も強く揺さぶられた。
そして抱き寄せられ、ギュッと浄火の両腕の中に包み込まれる。
「里緒・・・無事で良かった! 本当に無事で良かった!」
その声が涙交じりに震えているのに気付いて、あたしはようやく頭が冷静になってきた。
そうだ・・・あたしのミスのせいでこんなに心配をかけてしまった。
ちゃんとお礼言わなきゃ。
「浄火ごめん。ありがとう」
浄火を安心させようと笑いかけたあたしの頬の動きが止まった。
浄火は、泣いていた。
貫かれるかと思うほど真剣な彼の目は涙で濡れている。
唇を噛みしめ、泣き声を出すのを懸命に堪えているみたいだった。
「焦った。怖かった。オレ、本気で里緒が殺されちまうかと思った」
「浄火・・・・・・」
「怖かった。本気で本気で本気で怖かったんだ。里緒を失うかと思った」
耐えきれなくなったように浄火が顔を歪める。
頬に涙が流れ落ちて、食いしばった唇から嗚咽の様な音が聞こえた。
「里緒・・・オレの里緒・・・」
すすり泣きながら、切なくあたしの名を繰り返す浄火の声。
浄火の腕があたしを抱きしめる。
その腕は堅くて、力強くて、痛くて、とても熱かった。
浄火の熱い思いが、両腕を通してあたしの体の中に入り込んでいるように。