神様修行はじめます! 其の四

「里緒、里緒しっかりしろ!」


あたしの肩はガクガクと何度も強く揺さぶられた。


そして抱き寄せられ、ギュッと浄火の両腕の中に包み込まれる。


「里緒・・・無事で良かった! 本当に無事で良かった!」


その声が涙交じりに震えているのに気付いて、あたしはようやく頭が冷静になってきた。


そうだ・・・あたしのミスのせいでこんなに心配をかけてしまった。


ちゃんとお礼言わなきゃ。


「浄火ごめん。ありがとう」


浄火を安心させようと笑いかけたあたしの頬の動きが止まった。


浄火は、泣いていた。


貫かれるかと思うほど真剣な彼の目は涙で濡れている。


唇を噛みしめ、泣き声を出すのを懸命に堪えているみたいだった。


「焦った。怖かった。オレ、本気で里緒が殺されちまうかと思った」


「浄火・・・・・・」


「怖かった。本気で本気で本気で怖かったんだ。里緒を失うかと思った」


耐えきれなくなったように浄火が顔を歪める。


頬に涙が流れ落ちて、食いしばった唇から嗚咽の様な音が聞こえた。


「里緒・・・オレの里緒・・・」


すすり泣きながら、切なくあたしの名を繰り返す浄火の声。


浄火の腕があたしを抱きしめる。


その腕は堅くて、力強くて、痛くて、とても熱かった。


浄火の熱い思いが、両腕を通してあたしの体の中に入り込んでいるように。

< 297 / 697 >

この作品をシェア

pagetop