神様修行はじめます! 其の四
主さんがスルスルと近づいて来る。
「あちこち痛めてるんじゃないのかい? さ、おいで。治してやるよ」
「あ・・・う、うん。ありがとう」
あたしは浄火の胸を軽く手で押し返した。
さすがに浄火も、今度は抵抗なく腕の力を弱めてくれる。
不自然じゃない形で解放されたことに、あたしは密かにホッとした。
「ハインリッヒちゃん! しっかりして!」
お岩さんの声に振り返ると、血まみれのハインリッヒが今にも倒れそうだ。
「主さん、あたしよりも先にハインリッヒを治療してあげて」
「いいのかい?」
「うん。あたしは別に命に別状ないから後にして」
うなづいた主さんがハインリッヒにスルスル近寄っていく。
「あんた、治してやるから動くんじゃないよ? あたしを押し潰したら承知しないからね?」
「クリスティーヌちゃん、感謝いたしますわ!」
「もう一回その名で呼んだら今度こそ見捨てて帰るよ」
ブチブチ文句を言ってる主さんの背中の金の筋が、ぽうっと輝き出す。
治療が始まったのを見て、お岩さんがようやく落ち着き始めた。