神様修行はじめます! 其の四
浄火とお岩さんがお互いの顔を見合わせる。
そして揃って笑顔で同意してくれた。
「なにも心配ありませんわ。アマンダ」
「人間、調子悪りぃ時ぐらいいくらでもあるだろ?」
「うん! スポーツ選手だって好不調の波があるんだし、それと同じだよね!?」
欲しい言葉を与えてもらって、あたしは安心した。
腫れ物のような不安に蓋をして、心の隅っこに押しやる。
うん。大丈夫、大丈夫。
だって何があるっての? 何もあるわけないよ。
みんなだってこう言ってくれてるんだから。
この事はもう忘れようと、あたしは視線を辺りに走らせる。
・・・・・・ふと、主さんと目が合った。
ハインリッヒの治療を続けながら、無言であたしを見つめている。
何も言わないルビーのような真っ赤な光が、あたしの胸を真っ直ぐ突いた。
『人は同じものを見ていながら、それぞれがまるで違うものを見ようとする』
さっきの主さんの言葉が、突かれた心に鮮明によみがえった。
それは、目の前にある現実を・・・
人は自分の望む形に、心の中ですり替える・・・?
・・・・・・・・・・・・。
だけど、でも・・・・・・。
あたしは、確実なわだかまりを覚えながらも、不自然に主さんから視線をそらすしかなかった。