神様修行はじめます! 其の四

「異形の仲間だって・・・?」


「まさか、人間が鬼の仲間なのか?」


「おい浄火。この娘はお前の嫁だって言ってたよな? どういうことだ?」


想像通りの反応に、あたしは確信した。


戌亥のやつ、みんなの前で、あたしに『子ども殺しの異形の仲間』の烙印を押すつもりだ。


浄火を失脚させるための材料として利用するつもりなんだ。


こんのぉ・・・呪いの市松パッツンめ!


ギリギリと歯噛みするあたしに、戌亥が悠々と近づいて来る。


あたしの顔を上から覗き込むようにして、これ見よがしに質問を繰り返した。


「さあ言え。お前は、あの鬼の仲間か?」


その問いに対する答えは、当然ひとつ。


でもその答えを口にしたら、浄火はこの島の人たちから・・・。


あたしは煩悶しながら戌亥の目を見上げた。


その細く吊り上がった目の奥に、暗い情念の火がチラチラと燃えている。


恨み。妬み。憎しみ。悪意。妄執。


黒い炎の宿ったこの目は、あたしを見てはいない。


この男の目は、ひたすら浄火の影だけを見ている。


胸の奥に隠し続けてきた劣等感。


払っても払っても、亡霊のようにどこまでも纏わりつく敗北感。


波が侵食するように、自分を追い詰め続けてきた相手に・・・


ようやく、ようやく・・・・・・


『トドメを刺せる』


そんな陶酔に満ちた目をしていた。

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