神様修行はじめます! 其の四
そう言って、変わり果てた子どもを抱く放心状態の母親を指さす。
門川君と絹糸の目が、そのふたりに注がれた。
・・・・・・言わなきゃ。今こそちゃんと説明しなきゃ。
あたしはコブシを握りしめ、意を決して重い口を開いた。
「門川、くん・・・その子は・・・あたしの、せいなの・・・」
「それは、しま子が子どもを襲ったということか?」
門川君は、即座に状況を察してくれたようだった。
その声はとても落ち着いていて、動揺している様子は全くない。
おかげであたしは、少しだけ冷静な気持ちで説明することができた。
「ううん。襲ったのはもちろんしま子じゃない。海の大ウツボ」
「・・・・・・・・・・・・」
「海で、あたし達に襲い掛かってきたから撃退したの。そのせいで恨まれたんだと思う」
「まだそんなデタラメを言うつもりか! 自分の罪から、そんなに逃げたいか恥知らずめ!」
戌亥の叫び声に、その場の空気がまた悪化した。
みんなの非難の視線が一気にあたしに集中する。
突き刺さる視線を、皮膚に痛いほど感じる。
針のムシロとは、まさにこの事なんだと骨身に染みた。
あたしはますます強くコブシを握りしめ、下を向いて小さな声でつぶやく。
「ウツボが、島に姿を現すことは、今まで一度もなかったの。つまり、あたし達のせいで・・・」
そこまで言って、声は消え入ってしまった。
あたしは唇を噛みしめる。