神様修行はじめます! 其の四
「おい、みんな待て! おれの言うことを聞け!」
「もうやめい、お菊人形よ。そんな事は無意味じゃ」
「うるせえ! おれに説教するな!」
「お菊人形殿、そなた仮にもこの島の、上の立場の者でおじゃろう?」
「お菊お菊うるせえよ! おれは戌亥だ!」
「島民の気持ちを汲むべきでおじゃる。でなければ、お菊人形殿自身が、よそ者になってしまうでおじゃるよ」
「うるせえ! うるせえぇぇーーー!!」
戌亥は両手で髪を掻き乱し、体を折り曲げて息の続く限り絶叫した。
癇癪をおこした幼児のようにジダンダを踏み、激しく喚き散らす。
「やっと浄火に勝てると思ったのに! ・・・わああぁぁぁーーーーー!!」
完全に理性がプツンと切れている。
あたし達は呆気にとられた。
戌亥はぜえぜえ肩で息をして、乱れた髪のすき間からこっちを睨みつけてくる。
吊り上がった一重の目は据わり、ギラギラ血走っていた。
「オレは負けねえ! 絶対にお前にだけは負けねえぞ! 浄火ぁぁ!」
そう叫ぶなり、戌亥はあたし達に背を向けて駆け出した。
あっという間に後ろ姿が見えなくなる。
「戌亥・・・・・・」
浄火が、辛そうな声でポツリとつぶやいた。
「ガキの頃は、けっこう仲良かったじゃねえか。オレ達・・・」