神様修行はじめます! 其の四
胎動
「・・・・・・おい」
やたらと低周波な浄火の声が聞こえて、あたしはハッとした。
ヤ、ヤバイ! 周囲の状況無視して、ふたりの世界を作ってしまっていた!
「メガネ・・・お前、なにやってんだよ」
「天内君のケガの治療だ」
門川君は浄火には目もくれず、あたしをじっと見つめて頬を撫でている。
「オレはそんなこと聞いてねえ。なに人の嫁にベタベタ触ってるんですか? って聞いてんだよ」
「この手合いのケガは、触れて治すのが一番効率的だからだ」
「じゃあその、里緒の頬に触れてる手も治療のためか?」
「いや、これは違う。これは・・・」
門川君の手の平が、あたしの頬を柔らかく包み込んだ。
「これは、僕の望んだ役目だ」
「オレの目の前で図々しいこと言ってんじゃねえよ!」
あまりにも淡々とした門川君の口調に、ついに浄火がキレた。
門川君の手を乱暴に掴んで、ぐぃっと引き離す。
「手を離せ!」
「失敬な。君こそ手を離したまえ」
「里緒はオレの嫁なんだぞ!? 分かってるのか!? 嫁だぞ、オレの嫁っ!」
「分かっている。だが・・・」
門川君は立ち上がり、至近距離で浄火と真っ向から向き合う。
そして自慢げにキッパリ言い切った。
「彼女は、僕の従者だ」
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