神様修行はじめます! 其の四
悔しくて、歯が擦り切れそうなほどギリギリと噛みしめる。
そんなあたしの怒りなど気にもとめずに、ババは話を続けた。
「当主様のお考えや、いかに?」
高座の上の、まったく表情を変えない門川君に向かい、下から目線で話しかける。
「哀れ絶滅、とばかり思われた天内に、天の奇跡が現れたのです」
「他の一族も、この慶事にどれほど勇気づけられ、感動するでしょう」
「世界の全てにとっての慶事。この縁談が決まれば、当主様の大きな実績となりまする」
ババに続いて口々に当主たちが言いつのる。
あたしと浄火が結婚することが、どれほど世界のためになるのかを。
世界を守る代表者である、門川君に向かって。
こんなことを言われてしまったら、彼の立場では何も反論できなくなってしまう。
当主の立場を逆手にとって、追い詰め、完璧に封じ込む。
そして自分の思い通りの展開に持ち込もうとしているんだ。
・・・バぁ~バぁぁ~~・・・。
本当にいい根性しとるやんけ~~・・・。
握りしめたあたしのコブシが、怒りにプルプル震えた。
床スレスレに下がったババのデカい頭が、地面の上のサッカーボールに見える。
駆け寄って、大きく踏み込んで、思いっっ切りフリーキックしてやりたい!
青空に向かってスコーンと蹴飛ばしてやったら、どんだけサッパリするだろう!
「僕は・・・・・・」
ずっと沈黙を守っていた門川君が、初めて口を開いた。
あたしは振り返り、彼のメガネの奥の冷静な表情を見る。
門川君・・・・・・!