神様修行はじめます! 其の四
「なんで浄火ばかりひいきするんだよ!?」
「・・・・・・・・・・・・」
「おれは実の孫じゃないか! 血の繋がった実の孫が、可愛くないのかよ!?」
戌亥が泣きそうな声で、必死に長へ訴え続けている。
「おれのどこが浄火に劣っているんだよ!?」
「・・・・・・・・・・・」
「だめな所があるなら、教えてくれ! ちゃんと直すから!」
「・・・・・・・・・・・・」
「おばあ様、おれを見捨てないでくれよぉ! 頼むから!」
もはや半泣き状態の戌亥と、なにを言われても無言を貫く長。
なんか祖母と孫のケンカっていうより、女に捨てられる寸前の男の懇願みたいになってるけど・・・。
戌亥の心境も、ちょっとは理解できる。
実の孫を差し置いてまで、わざわざ別の人物を次の長に指名する。
それはつまり、『浄火に比べてよほどお前が劣っている』って宣告されてるに等しいわけで。
しかも、逃げ場のない狭い村社会の中で。
・・・・・・そりゃあ立場がないだろう。
必死になって自分を追い詰めちゃうのも、分かる気はするんだけど。
「戌亥よ、何を言われても答えはひとつだ」
かたくなに無言のままだった長が、ようやく重苦しい声を出した。
「私は、お前ではなく浄火を選んだ。それだけだ」
「・・・・・・!」