神様修行はじめます! 其の四
温かくなりかけていた体が、再び冷えていくのが分かる。
顔の筋肉が強張ってピクリとも動かない。
そしてそのまま、彼を見つめ続けた。
「君には現在、正式な『立場』というものがない。だが、この縁談が決まれば・・・」
あたしの動かない表情から、果たして何を感じ取っているものか。
門川君は淡々と説明を続けている。
あたしに縁談を勧める理由を、訥々と。
理路整然と。
「君はこの世界の一員として認められる。確固とした立場ができれば、正式な側近として、僕の隣に堂々といられる」
頭の中に、彼の言葉が冷たく響く。
手の平にじっとり汗が滲んで、どんどん体から血の気が引いていく。
心臓ばかりが、ドクドクと激しく鳴り続ける。
「僕は大切な君に、そばにいて欲しいのだ」
大切な君に・・・・・・
そばに、いて欲しい・・・・・・?
泣けばいいのか、怒ればいいのか、わめき散らせばいいのか。
でも、そのどれもできず。
あたしは自分が恋する人の顔を、黙って見つめ続けていた。
そして彼の言葉を、聞き続けていた。
「天内同士として、縁談自体も有意義だ。君の意思は当然尊重するが、僕としては、この縁談を推奨したい」
好きな人の『お前は別の男と結婚しろ』 と言う言葉を・・・
あたしは呆然と立ち尽くし、聞いていた・・・。