神様修行はじめます! 其の四
あの父親は、子独楽から全ての事情を聞き出していた。
七つの子どもの口を割らせるなど、造作も無かったことだろう。
『これが、その水だな?』
片手に、あの水の入ったツボが握られていた。
それは何かあった時の為に、信子がこっそり子独楽に持たせた物。
手放す娘に、何もしてやれない母親の、せめてもの気持ちだった。
『お前たち、この水をどこで手に入れたのか話せ』
水の秘密を知った父親は、即座にその価値の大きさを悟った。
使いようによっては、とてつもない切り札になる。
我欲にまみれた者が手に入れたがるのは、知れた事だった。
そして、それが世界に及ぼす悲惨さも。
信子は断固として拒絶した。
『あの水は、この島のもの! あなたに教えるわけにはいきません!』
『信子よ、子独楽がなぜこんな姿になったか、教えてやろうか?』
『・・・え?』
『この水の真偽を、わしが調べぬとでも思ったか?』
それまでグッタリとしていた子独楽の体が、突然ビクッと震えた。
はっきりと怯えた表情で父親とツボを見ている。
父親がそんな娘のアゴをつかみ、乱暴に上向かせた。
子独楽は小さな泣き声をあげながら、懸命に抵抗している。