神様修行はじめます! 其の四
絹糸が門川君に話しかけて、場の空気を変えた。
「永久よ、小娘は今ここで決断せねばならぬのか?」
「いや、そんなことはない。考える猶予は必要だろう」
「ならばひとまず、会議をお終いにしてくれぬか? 気を失ったしま子を別室に運ばねばならぬ」
すでに意識が戻っていたしま子が、絹糸の目配せを受けて、慌てて意識不明のふりをしてパタリと倒れる。
「ああ、頼む絹糸。では今日の所は、これで会議を終えるものとする」
「承知いたしました。当主様。では、これにて・・・」
ババがそう言って深く平伏する。
他の当主たち全員も、それに従い平伏した。
頭を下げたババの口元が「してやったり」というように笑っている。
その勝ち誇った笑いに気付いていながら、あたしには何もできない。
門川君がスッと立ち上がり、退席していく。
開かれたふすまを通り抜ける瞬間、彼は一瞬あたしの方を見た。
あたしは自分の目に、いろんな想いを込めて彼を見つめ返す。
あたしたちの視線は、確かに混じり合った。
門川君、門川君・・・・・・。
言葉にできない感情を目に込めて、彼を精一杯に見つめる。
どうか伝わって欲しいと。
でも次の瞬間にふすまは閉ざされ、彼の姿はあたしの視界から消え去った。
あたしの目に、彼の背中の残像だけが虚しく残される。
その背中にすがりついて、殴りつけたかった。
そして思い切りなじって、泣きたかった。
でも・・・・・・
できない・・・・・・。