神様修行はじめます! 其の四
「里緒に手を出す男は、オレが容赦しねえ」
「そのセリフ、そっくりそのまま君へ返そう」
威嚇するような浄火の熱い声。
淡々とした門川君の冷たい声。
相容れない声が、洞窟内に響いて重々しくこだまする。
あたしは慌てふためいて、なんとかこの場を収めようとした。
「あの、ふたり共、今は上へ戻・・・」
「里緒はオレのもんだ。オレの方が、百倍も千倍も里緒を大事に思ってる」
「あの、それはともかく今は、上へ・・・」
「自分が彼女に、どれほど害を与えるかも分からないのか?」
「あの、だからホントに、今は上へ・・・」
「それほど里緒が好きなんだよ! 分かっていても諦められないほど!」
・・・完全に、無視されてしまった。
無力なあたしを尻目に、ふたりは言い争いを続ける。
「それぐらいオレの気持ちは本物なんだ!」
浄火は全身全霊で、悲しい思いの丈を叫ぶ。
「だから? 自分が彼女を手に入れるのが正当だと?」
身悶える様な浄火に、門川君は動じた様子もない。
静かにメガネのブリッジを指で押し上げ、ふぅっと息を吐く。
「それは『本気で金が欲しいなら、強盗するのも仕方ない』と言っているのと同じだ」