神様修行はじめます! 其の四
息苦しいほど強く、顔をギュッと厚い胸に押し付けられた。
背中を締め付ける二本の腕が痛い。
髪に狂おしく頬ずりされる感触がして、あたしは混乱した。
「里緒! 絶対に離さない!」
切ない声と熱い息を耳の上に感じて、反射的に体を固くする。
あ、あたし、浄火に触れられたら・・・!
「痴れ者! 天内君を放せ!」
「嫌だ!」
烈しい怒りを含んだ声に、逆上した声が答える。
浄火の胸は発作のように激しく波打っていた。
ドクドクと荒々しい心臓の音が聞こえる。
ほとんど呼吸もできない態勢で抱きしめられ、あたしは軽いパニック状態。
(苦しい! 放して浄火!)
抵抗して身をよじり、どうにかこうにか顔を上げ、プハッと息を継いで叫んだ。
「浄火! やめ・・・」
「里緒ぉ!」
すぐ目の前に浄火の顔があった。
彼の両目に宿った強い狂気の光が、あたしの目を刺し貫いた。
あ・・・・・・。
この目、見たことがある。この目は。
じー様が、永世おばあ様を襲った時と同じ目・・・・・・。
そう思った瞬間。
その目が迫ってきて、あたしは・・・・・・
浄火に、初めてのキスを奪われた。