神様修行はじめます! 其の四
あちら側では、確かに持てる者が普通なのだろう。
でもこちら側では、持たざる者こそが間違いなく普通なのだ。
それは優劣でもなく、善悪でもなく。
ましてや、幸不幸などでは有り得ないのに。
なのになぜ、自分を受け入れない?
なぜ自分の価値を他者の価値観に委ね、他者に成ろうとする?
それをすれば、きっと道を踏み外してしまうのに。
自身も他者も、不幸に引きずり込んでしまうのに・・・。
「なんでだよ? なんでなんだよ? 戌亥・・・」
ワナワナと唇を震わせ、浄火は泣きながら戌亥へ語りかける。
その答えをもう、彼の口から聞く事はないのを知りながら。
持たざる者である自分が力を持ち、結果、その力で友の命を奪ってしまう。
こんな事が、『普通』であっていいはずがない。
そんなはず、絶対にないのに。
なのに、なぜ我らは力を欲するのだろうか?
・・・なぜ・・・・・・?
「戌亥、戌亥、戌亥・・・」
浄火は、友の名前を繰り返し呼んでいた。
肩を震わせ、すすり泣き続ける浄火をマロさんが悲しい瞳で見つめている。
マロさんには浄火の気持ちが痛いほど分かるから。
彼の気持ちが結局、どうしても伝わらなかった悔しさが。
自分の手で友を殺す決断をするしかなかった苦悩が、誰よりも分かるから。
「浄火殿・・・・・・」
マロさんが慰めるように浄火の肩に手をかけた、その時。
「なぜなのか、理由を知りたいのか?」
炎の中から、淡々とした声が聞こえた。