神様修行はじめます! 其の四
(・・・・・・!?)
浄火が涙に濡れた顔をバッと上げた。
あたし達も驚いて炎を凝視する。
これ、戌亥の声だ! なんで!?
有り得ない! 滅火の炎に包まれながら、こんなに平然としていられるなんて!
目の前で滅火の炎がスゥッと掻き消えていく。
炎の中から見えた、あまりに場違いな物にあたしは目を見張った。
・・・・・・卵!?
真っ白な羽毛に完全に覆われた、2メートルの大きさはあるだろう卵。
これ、この古代ヘビの卵なの!? 茹で卵になっちゃうよ!
―― ピシ・・・ピシ、ピシ・・・
卵がヒビ割れ、ボロボロと細かい殻が崩れ落ちていく。
その中から、ヤケドひとつ傷ひとつ無い戌亥が泰然とした様子で現れた。
「な・・・・・・!?」
驚いて声も出ないあたしの横で、セバスチャンさんが呟く。
「ケツァルコアトル。それは慈悲と癒しと、授与の神」
慈悲。癒し。授与。
母のように、全ての苦痛からの守護を与える慈悲の神。
「全てを滅する天内の炎ですら、あのヘビには効果がないってこと!?」
「防御という一点においては、典雅様の結界術に勝るとも劣らないでしょう」
―― ワアァァァ・・・・・・・
村人たちが派手な歓声を上げた。
勝利を確信したような喝采に包まれ、戌亥はまさに、神のように超然と立っていた。