神様修行はじめます! 其の四
すれ違ってしまっていた、あの日
「なぜ力を欲するのか。お前はおれにそう聞いたな?」
戌亥が、唖然としている浄火に向かって言う。
「逆におれは、お前に問う。・・・なぜ、それが分からない?」
「・・・え?」
「なぜその気持ちが分からないのか、自分で考えたことがあるのか?」
戸惑う浄火に、戌亥は堂々とした態度で語り続ける。
「教えてやろう。それはお前が・・・『持てる者』だからだ」
浄火は怪訝そうに眉を寄せた。
きっと戌亥が何を言っているのか、まるで見当がつかないんだ。
「なにを言ってるんだ? オレにだって神の一族の力は無い・・・」
「ほら、やはりお前は何も分かっていない」
フルフルと戌亥は首を横に振る。
そして、真っ直ぐに浄火を見つめた。
その目はこれまで見たことが無いほど落ち着いて、素直な色をしていた。
「お前は生まれながらにして、おれには無いものを全て持っていた」
意思の強さも、統率力も。
人を惹きつける端整な容貌も、高いカリスマ性も。
いつも気がつけば、お前は人々に囲まれて笑っている。
それはおれがどんなに望んでも、絶対に無いもの。
当たり前の顔をしながら、お前はおれの欲しいものを全部手にしていた。
・・・知らなかったろう? 浄火。
そんなお前を、おれがどんな思いでいつも見つめていたか。