神様修行はじめます! 其の四
門川君と主さんが、ふたりの元へと大急ぎで駆けつけた。
「あんた、いったい何やってんだい!? コイツはあんたの孫だろ!?」
「長殿、そこを退いてくれ。まだ間に合うかもしれない」
戌亥の背に覆い被さり泣きながら、長さんは首を横に振って拒絶する。
血を吸って真っ赤になった服をギュッと握りしめながら、答えた。
「もういい。もはや、これまでだ」
「なに言ってんだい! いいからそこをお退き!」
「これしか道は無かったのだ。いや・・・私が、この子の他の道を断ってしまった」
自分が殺した孫の骸を掻き抱く様にして、長さんは泣き崩れている。
嗚咽にまみれた声が、悲しく訴えた。
全て私のせいなのだ。
私が、この島の長だったから。
長の孫である戌亥が、自分の立場に苦しんでいる事は知っていた。
この子は幼い頃から弱くて、とても脆い心の持ち主だったから。
だけどそれを知りながら、私は何もしてやらなかった。
やれなかった。
私は、長だから。
私情を交える事は絶対に許されない。
そんなことをすれば、島は滅びてしまう。
『なぜ?』 と幾度も袖に追いすがる戌亥の手を振り払い、沈黙を守り続けるしかなかった。
・・・なぜと問われて・・・
何と答える?
『お前には、その能力も器もないからだ』 と、この口で告げろと?
だから私は、何もできなかった。
この子の心が蝕まれ、壊れていくのをこの目で見ながら。
「何もしないで背を向けて、この子を救いようのない場所まで追いつめてしまった・・・」