神様修行はじめます! 其の四
あたしは門川君の背中越しに近づいて、戌亥の顔色を確認した。
もう皮膚の色は土気色に変色してしまっている。
門川君があたしの気配に気が付き、小さく首を横に振る。
もう、ダメだ。これではもう・・・。
長さんは戌亥の髪に頬ずりし、滝のように涙を流して悔恨する。
指先で確かめるように、土気色の顔を撫でた。
長さんの指についた血が、赤く掠れた線になって戌亥の頬を染めた。
「私のせいだ。全ては私のせいなのだ・・・」
掟を破り、子独楽に水を飲ませたことも。
信子の心を変えてしまったことも。
孫を追い詰めてしまったことも。
島の現状を招いてしまったことも。
全ては私が、愚かであるが故。
全て、全て、全てこの私の・・・・・・
―― グィッ
やおら長さんは身を起こした。
戌亥の背に突き刺したナイフを握りしめ、抜き取る。
そして制止する間もなく、そのナイフを深々と自分の腹に突き刺した。
(な・・・・・・!?)
飲み込まれる様に腹部に消えていくナイフの刃。
その根元から、鮮烈に濡れ光る赤い血がドポドポと溢れ出す。
長さんが痙攣しながら、苦悶の呻き声を出した。
呆気にとられたあたしはその声で我に返り、悲鳴をあげる。
「お、長さんーーー!?」