神様修行はじめます! 其の四
「あんた、気でも触れちまったのかい!? いい加減にしとくれ!」
金切り声をあげた主さんの背中の筋が、金色に輝き出した。
治癒の術を発動しているんだ! 主さん、お願い急いで!
でも長さんは主さんに向かって、孫と自分の血に染まった手を伸ばす。
そして震える指で、金色の治癒の光を自ら遮ってしまった。
「これ、何やってんだい! 手をお放し!」
「これで、良いのだ。私は、自分の犯した重すぎる罪を償わねばならない・・・」
「いいからサッサとこの手をお放しったら!」
「私の命は、私のものだ。私以外の誰にも、この命の決定権はない・・・」
「それを言うなら、あんたの孫だってそうじゃないか! 勝手なことばっかりお言いでないよ!」
喚き立てる主さんに、長さんは緩々と首を振り、断固として拒絶した。
そして再び、戌亥の体の上にドサリと覆い被さった。
まるで精一杯の力で抱きしめるように。
「戌亥・・・済まない・・・」
長さんの目から、次々と透明な涙が流れ落ちる。
「浄火、済まない。島民たちよ、済まない・・・」
わななく目が、唇が、子供のようにすすり泣きながら許しを請う。
「子独楽、済まない。信子、済まない。済まない。済まない・・・」
身も世も無く泣き崩れるその姿を見ながら、あたしは唐突に悟った。
あたしの脳裏に浮かぶ、ひとりの女性の後ろ姿。
これは・・・・・・あの人のクモの糸。
あの傷付いた人が張り巡らした糸に嵌り、長さんはこの結末に辿り着かされた。
自らの手で孫を殺し、長であった自分の無能さを思い知り。
そして絶望して、許しを請いながら死んでいくという結末に・・・。