神様修行はじめます! 其の四

あたしは片手で顔を覆い、目の前の惨状に虚しく首を振る。


ねえ、これが、あなたの望んだことなの?


なんて・・・・・・


なんて、残酷な復讐。


あなたの気持ちはよく分かる。


どうしても許せない気持ちも。


あなたのとった行為の全てが、決して私利私欲ではないことも。


分かる。分かるんだ。


分かるけど・・・・・・けれど!


「頼むから、あたしにあんたの命を救わせとくれ」


主さんが、胸に迫るような声で訴えた。


長さんは額にびっしり汗をかきながら、そんな主さんを見る。


その目の縁は黒ずんでいた。


呼吸も荒く、ひどく乱れて、まともに息も吸えていない。


もう事切れる寸前なのは明らかだった。


「あたしゃね、そんなの見たくないんだよ。だからあの時、あいつの前から姿を消したのさ」


白く美しいヘビの背は、人間の血で汚れてしまっていた。


恥を告白するようにうな垂れながら、主さんは悲しげに訴える。


あいつって・・・誰のことだろう?


ひょっとして、昔一緒だったっていう幕末の?


「見届けることは、しなかった。あいつらが大波に飲まれ、もがき、沈んでいってしまう姿を・・・見たくなかったから」

< 566 / 697 >

この作品をシェア

pagetop