神様修行はじめます! 其の四
あたしは片手で顔を覆い、目の前の惨状に虚しく首を振る。
ねえ、これが、あなたの望んだことなの?
なんて・・・・・・
なんて、残酷な復讐。
あなたの気持ちはよく分かる。
どうしても許せない気持ちも。
あなたのとった行為の全てが、決して私利私欲ではないことも。
分かる。分かるんだ。
分かるけど・・・・・・けれど!
「頼むから、あたしにあんたの命を救わせとくれ」
主さんが、胸に迫るような声で訴えた。
長さんは額にびっしり汗をかきながら、そんな主さんを見る。
その目の縁は黒ずんでいた。
呼吸も荒く、ひどく乱れて、まともに息も吸えていない。
もう事切れる寸前なのは明らかだった。
「あたしゃね、そんなの見たくないんだよ。だからあの時、あいつの前から姿を消したのさ」
白く美しいヘビの背は、人間の血で汚れてしまっていた。
恥を告白するようにうな垂れながら、主さんは悲しげに訴える。
あいつって・・・誰のことだろう?
ひょっとして、昔一緒だったっていう幕末の?
「見届けることは、しなかった。あいつらが大波に飲まれ、もがき、沈んでいってしまう姿を・・・見たくなかったから」