神様修行はじめます! 其の四

私はきっと、卑下していたのだ。


統率者としての能力を持たずに生まれてきた、戌亥を。


神の一族の力を持たずに生まれてきた、自分達を。


それも『普通』であるという事を、自分で受け入れることができなかった。


だから、人が人として生きる形を見失ってしまったのだ。


胸を張り、認めれば良いだけのことだったのに。


私に神の力は無い。


そして、長にも成れない自分が居る。


でもそれは・・・・・・


そんなことは・・・



「『クソッ喰らえ』。そう言って、お前のように高笑いすれば良かったのだ・・・」


「・・・・・・・・・・・・」


主さんは、長さんの言葉を黙って聞いていた。


長さんの唇の色は紫に代わり、目は虚ろで、呼吸の感覚はしだいに間遠になり。


最期の時は、もはや目前に迫っている。


それでも彼女は、涙だらけの顔で微笑んでいた。


やっとのことで受け入れる事ができた。


そう、喜んでいるのか。


やっとのことで終わりを迎える事ができる。


そう、安堵しているのか。


その心の内を推し量る事も叶わぬまま、彼女は、最後に宝物を抱きしめた。


・・・戌亥を。その手で殺めた孫を。


わずかな力の欠片も入らぬ、細い細い指先を震わせて。


永い永い苦悩の刻を経た、シワだらけの顔を優しく緩ませて。


ゆっくりと、万感のひと言。


「あぁ、戌亥・・・・・・」


最も愛していたであろうその名前を、噛みしめるように呟いた後。


眠る様に永遠に、その目は閉じられた。

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