神様修行はじめます! 其の四
あたしの心を苦しめているのは、それよりも別の事だ。
門川君に、他の男との結婚を勧められてしまった事。
なによりも、これに尽きる。
彼に悪気はないのは分かってるんだ。
彼は結婚を、契約とか、同盟とか、そんな風に認識しているだけなんだ。
それは彼の責任じゃない。ひたすら不幸な生い立ちのせい。
前に一度だけ、その認識を改める機会があったんだけど。
あたしが、その、反射的に彼からのキスを防御してしまったせいで・・・。
絶好のチャンスを台無しにしてしまった。
内心ひそかに、二度目のチャンス到来を心待ちにしてけど。
あれ以来門川くんは、すっかり忘れてしまったように、なんのモーションも仕掛けてこない。
つまり今回の窮地は、あたしのせいでもあるわけで。
だから彼ばかりを責められないんだけど・・・。
分かっていても、つい、恨みがましく思ってしまう。
こんなのヒドイよって。
門川君は、あたしが他の男と結ばれちゃっても平気なの? って。
嫉妬してくれないんだろうか。
そういう感情って、恋をすれば、本能で湧き上がってくるもんじゃないの?
門川君・・・ほんとにあたしのこと好き?
それとも、やっぱりただの友情だったの?
彼の気持ちを、あたしが自分に都合よく錯覚しているだけなんじゃないかな?
もしもそうなのだとしたら・・・。
あんまりミジメ過ぎて、泣くにも泣けないよ・・・。