神様修行はじめます! 其の四
ザリザリと土を踏み、浄火がゆっくり近寄ってくる。
主さんの隣に、腰から砕けるようにドサリと座り込んだ。
そして主さんとそっくりな目をして、亡骸を見下ろしている。
並んでうな垂れるふたりの姿は、とてもよく似ていた。
「なあ、戌亥。お前さ・・・・・・」
もう物言わぬ相手に、浄火はポツポツと話しかけている。
「覚えてるか? ガキの頃、一緒に遊んだよな」
駆けっこして、よく競争したよな?
お前、足遅かったから、いっつも勝つのはオレでさ。
オレは後ろのお前を振り返りながら、いつも同じこと言ってた。
『早くここまで来いよ! 戌亥!』
お前は真っ赤な顔で、必死に走ってた。
でも追い付けなくて、そのうち息が切れて、どんどんオレから引き離されて。
遠ざかるお前は歯を食いしばって、今にも泣きそうな顔してた。
あの時ほんとに・・・・・・
お前は、泣いていたんだな・・・。
「負けてやりゃあ良かったのか? そうすりゃ良かったのかよ?」
嗚咽まじりの、浄火の声。
許しを請うような、逆に責めているような、悲しい問いかけ。
「なあ、戌亥。なあ・・・・・・」
いくら問うても、答えは無い。
仮に答えを聞けたところで、報いも無い。
それでも問わずにいられない。
・・・いられないんだ。
人目も憚らずに、浄火はしゃくり上げて泣いていた。