神様修行はじめます! 其の四
村人たちは浄火のそばに次々と集まり出した。
そして自分たちの不安を口にする。
「浄火、オレたちの、この神の一族の力はどうなるんだ? また失ってしまう事になるのか?」
「ああ。オレは力を消す方法を探すつもりだ。それが一番いいと思うから」
「そんなのは嫌だ! せっかく手に入れたのに!」
「失いたくない。この力はオレたち島民を救う力なんだ」
浄火は全員を前に、迷いなく断言する。
「違う。不条理な方法で手に入れた力で、救われる道理が無い。待っているのは破滅だけだ」
長さんと戌亥の無残な亡骸が、浄火の言葉を裏付ける。
村人たちは血まみれのふたりの姿を見て、押し黙ってしまった。
それでも力を失うことに、どうしても未練があるようだった。
「でも、でもやっぱり・・・」
「ねえお母さん、あの白い塊は、なんなの?」
子どもが、母親に不安そうに聞いている。
戌亥の血と一緒に体外に流れ出た、あの異形を見たんだろう。
「あれ、動いてたよ? あんなのがボクの体の中で生きてるの?」
「ボク、怖い。本当に大丈夫なの?」
「あたしも怖い。イヤだ。あんなのが体の中で勝手に生きてるの、ヤだ!」
「あたし、死ぬの? あの白い塊に体を乗っ取られて、死んじゃうの?」
子どもたちが、半べそをかきながら次々と恐怖を訴えた。
母親たちの表情も暗く、不安に満ちている。
不気味に動き回る正体不明の異形を目の当たりにして、現実問題として色々な疑惑が浮かんできたんだろう。
母親たちは答えを求めて父親たちの顔を見た。
でも誰も、その疑惑に明るい答えを返せる者はいなかった。