神様修行はじめます! 其の四
あの気丈なお岩さんが、本気で恐怖して泣き叫んでいる。
あたしは怒りのあまりに顔中の筋肉がワナワナ震え、我を失ってしまった。
限界値をブッちぎった激情で、自分の人格がメキメキと豹変していくのが分かる。
て・・・テんメぇ~ ゴぉら゛ぁぁああ・・・!
「お岩さんになにしてやがる! この、クソじじ・・・!」
「この、クソじじいがあぁぁーーー!!」
・・・・・・へ?
これ、あたしが叫んだの?
と思うほど、タイミングばっちりな絶叫が頭の後ろから轟いた。
あたしは背後を振り返り、その恐ろしい光景に「ひっ!?」と短い悲鳴をあげる。
ま・・・ま・・・・・・
(魔王、降臨!!)
この世のものとは思えないほど凄惨な表情をした男が、魔界のオーラを全身から撒き散らしていた。
彼の解けた黒髪が、壮絶な怒りのためにブワッと逆立っている。
おかげであたしのグツグツ煮えたぎっていた血液が、スーッと冷えて下がっていく。
・・・す、すげえ。もはやこの人、人間じゃねえ。
開けてはならない扉を、ついにその手で開けてしまったよ。
いつかはやると思ってたのよ。
・・・できればあたしの近くで開けないで欲しかったけど。
「今すぐ岩から離れろ! 腐った老いぼれが!」
魔界の王、怒りの咆哮。
雷が落下したようなビリビリ響く振動で、鼓膜が破れてしまいそう!
一瞬絹糸がビクッと動きを停止したほどだ。
お岩さんと子作りマシーンが驚いてこっちを見上げる。
涙に濡れたお岩さんの表情が、ぱあっと希望に輝いた。
「遥峰えーーー!!」
「その干からびた薄汚ねえ手を岩から放せ! 死ぬまでブチ殺すぞ、てめえ!」