神様修行はじめます! 其の四

「つまり上層部は、天内さんを、永久さま以外の相手と結婚させたいんですよね?」


凍雨くんの声が沈黙を破った。


「そうじゃ。仮に今回は何とか逃れたとしても、また次の縁談がくるであろうな」


「よし、天内さん! ぼくと結婚しましょう!」



・・・・・・・・・・・・へ?



思わず顔を上げたあたしに向かって、凍雨くんが明るく微笑んだ。



「表向きはそういうことにしておけば、上層部も満足するでしょう?」


「・・・・・・・・・・・・」


「そしたら、これまで通りに過ごせますよ。もう心配いりません」


「凍雨くん・・・」


「ぼくは天内さんに、返しきれないほどの恩があるんです。これくらい当然ですよ」



そんな健気なことを言ってくれる、凍雨くんの純粋な笑顔。


それを見てたらもう、ありがたくて、胸にジーンときて・・・。


泣けないはずなのに目が潤んできてしまった。



いい子だなぁ・・・凍雨くんて本当に。


優しくて素直だし、顔もすごく可愛いし、将来はイイ男間違いなし。


いつかきっと素敵な恋ができるよ。



「だから気持ちだけ受け取っておく。ありがとね、凍雨くん」


「天内さん! 遠慮なんかしてる場合じゃないですよ!」


「とはいえ現実的に考えて、やはりそれが得策とは申せませんでしょう」



握りこぶしで力説する凍雨くんを、セバスチャンさんが穏やかに諭した。



「おふたりが婚姻するとして、上層部がみすみす見逃すとも思えません」


「でもじゃあ、どうすればいいんですか?」


「ひとまず天内のお嬢様は、この場から離れる必要がございますね」

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