神様修行はじめます! 其の四
門川君なら、きっとまだこの人を助けられる。
この程度の瀕死状態なんて、治癒する事は朝飯前だろう。
「永久様」
セバスチャンさんの声が聞こえた。
「どうぞお急ぎください。信子長老の元へ」
「セバスチャン」
「何もおっしゃいますな。どうぞ、このまま」
こちらに背中を向けた彼の顔は見えない。
感情の無い口調からは、彼の心情は読み取れない。
でもあたしには、セバスチャンさんの考えが手に取るように分かった。
誰もいなくなった時、彼はその手できっと・・・
蛟の長老の命を絶つのだろうと。
「・・・・・・承知した」
門川君は、それだけ言った。
絹糸も浄火も、それに対して何も言わない。
誰もが何も気付かない、知らないふりをしている。
本来なら、それはもちろん助けるべきなんだろうけど。
でも・・・・・・
この蛟の人は、超えてしまったんだ。
あらゆる意味で、世界の許容の限界を。
超えてしまった。
「行こう」
絹糸の背に、あたしと門川君と浄火が乗り込む。
絹糸がフワリと宙に浮いた瞬間、あたしの耳に声が届いた。
「ありがとう・・・・・・」
お岩さんが、セバスチャンさんの肩越しにあたしを見つめている。
抱き合うふたりの姿が、あっという間に遠ざかる。
完全に見えなくなってしまうまで、あたしは目を凝らし、見つめ返していた。