神様修行はじめます! 其の四
「信子よ、正直、我は何度も舌を巻いた。感服したわい」
絹糸が語りかける。
「見事なり。お前が仲間であってくれたならと、何度も思うた」
「なにを言われているのか、見当もつかない」
淡々とした、落ち着き払った声を風が運んでくる。
「私は、何もしていない」
そう。この人は何もしていない。
したのは、全部周りの人間だ。
この人は糸を張り、それを黙って眺めていただけ。
だから彼女は罪に問われない。
自分の手を何も汚していない彼女を、誰も、決して罪に問う事はできないんだ。
だから・・・・・・悲しかった。
してやられたとか、うまく手玉に取られて悔しいとか。
そんな気持ちは全然起きない。
だって彼女は、少しも喜んでなどいないから。
ほんのちょっとも、救われてなどいないから。
あぁ・・・せめて・・・
せめて、『それは罪だ』と彼女を断じることができるなら。
そしてこの先へ行こうとするのを、思いとどまらせる事ができるなら。
あなたを・・・
ここで斃さなくて済むのに・・・。
処罰はできない。止めることもできない。ならば。
世界を守るためには、この傷付いた人をあたし達が斃す以外に、ない。