神様修行はじめます! 其の四
門川君は、あたしのように打ちひしがれてはいなかった。
この絶望的な状況で、已然、絹糸と浄火を全力で治癒し続けている。
その決然とした意思と、戦意の漲る姿たるや、まさに神の末裔。
あぁ、彼の心はどこまでも誇り高い。
そしてどこまでも、無力とも諦めとも無縁だった。
彼の周囲からは、かすかな冷気さえ感じられた。
彼はこのうえ、さらに氷系の術まで発動して、異形を攻撃しようとしている。
でも・・・さすがにムチャだ。
いくら彼が氷血の申し子とはいえ、同時に3つの高等術の発動なんて不可能。
冷気は、攻撃まで高まる気配は無かった。
それでも門川君は諦めない。
戦う意思にあふれた鋭利な美貌で、あたしに毅然と叫ぶ。
「君は僕を守ると誓ったろう!? 自分の発言には責任を持ちたまえ!」
彼の雄々しい言葉は、逆にあたしの心を虚しさで覆ってしまった。
でも門川君、あたしは、そのための天内の力を失ってしまったの。
そのあたしに、どうやってあなたを守れと言うの?
長さんも、戌亥も、信子長老も、子独楽ちゃんも。
誰ひとりとして、あの哀しい人たちを守ることの叶わなかったあたしに。
「うぅぅーー・・・」
逝ってしまった人たちの姿が脳裏に浮かび、またあたしの目に熱い涙が浮かぶ。
門川くんは、そんなあたしを遠慮なく怒鳴りつけた。
「何度同じことを言わせるつもりだ! 痴れ者! 泣いているヒマがあるなら戦え!」
「・・・ムリなんだよ!」
「無理も無茶も無能も、僕は一切、受け付け無い! 僕が戦えと言ったら戦え!」