神様修行はじめます! 其の四
怒鳴り続ける門川君の形相は変わっていた。
「泣きごとは許さない! 諦めも許さない! そして、僕の目の前で君が死ぬことも許さない!」
戦い続け、生き残り続けてきた者。
将として幾多の命を守り続けてきた、男の顔だった。
「君はこの世界で戦う道を選んだはずだ!」
「戦う能力を失ったあたしに、どうしろって言うの!?」
頭を抱え、あたしは悲鳴まじりの泣き声を出す。
戦えるものなら、あたしだって当然戦っているよ!
それができない者に対して「戦え」だなんて、それがどれほど残酷なことか分からないの!?
「君の頭はどこまで機能がシンプルなんだ! 僕は、『生きる責任を放棄するな』と言っているんだ!」
あたしの泣き声が飲み込まれてしまうほど、彼は大声を出した。
「見ろ! あの屍を!」
そして信子長老の遺体に目を向ける。
「君の命は、あの屍の上に成り立っているんだぞ!」
生きる形が違った者同士が対峙すれば、必ずどちらかは道半ばで斃れる。
そして彼女は死に、君は生き残った。
その君が、死んでいった者の屍を前にして諦めるのか?
他者の命の果てに立った者には、否応なしに生きる責任が課せられるのだ。
あの命を犠牲にしてまで生き残った自分自身が、これからも生きる。
その意思を持ち続けることこそが、戦い。
君はいつも口癖のように自分を甘いと言うが、そうじゃない。
そんなものは甘えでもなんでもない。
「命への責任の放棄。それこそが唾棄すべき甘えだ。まさに、ヘドが出る。僕の・・・」
門川君は両目を爛々と光らせ、断言した。
「僕の愛する君が、諦めを受け入れるなど断じて許さない。決してさせない! 僕が!」