神様修行はじめます! 其の四
悶え苦しむ異形のうごめきが、少しずつ静まっていく。
力尽きるように、ひとつ、またひとつと気配が消滅していく。
滅火の炎が役目を終えて、それと同時にあたしの体からも力が抜けていった。
紅蓮の狂乱が眠りに落ちるように沈静化していく。
そして嘘のように炎の楽園が去り、風景は通常へと戻った。
目に見えるのは揺れて輝く魔の海と、どこまでも広がる砂浜。
そして、その砂浜に風に吹かれて横たわる・・・
離ればなれの、母と娘の姿。
「・・・・・・」
あたしは、あっけなくその場に崩れ落ちた。
頭から引っくり返ったけれど、痛覚も、もはや倒れた感覚すらも無い。
滅火の能力の復活で分泌されまくっていたドーパミンが、ついに枯渇したんだ。
搾り尽くすだけ搾り尽くしたマヨネーズのチューブみたいに、もうスカスカ。
苦しいとか、悲しいとか、虚しいとか。
そんな感情すらも全部使い尽くしてしまった。
ムチャと無理と無謀をブッちぎり過ぎた、力を暴走させた者のなれの果て。
抗いようも無く意識が遠のき、命が使い果たされ、遠のいていく。
・・・寒い。
どんどん体が冷えていく。寒い寒い寒い。
ねぇ門川君、あたしすごく寒い気がするんだよ。
でも寒いと理解したのも、ほんの一瞬。
もうあたしの意識は完全に、闇の中へと飲み込まれてしまった。