神様修行はじめます! 其の四
常世という言葉

そしてあたしは、目が覚めた。


『目が覚めた』っていう意識すらも、最初はおぼろげで。


ぼんやりとした頭は、状況をまるで理解できない。


それでも顔を撫でるように吹く風が、少しずつあたしの脳を覚醒させていった。


「目が覚めたか?」


門川君の声が聞こえた。


ソロソロと視線を動かすと、彼の顔が頭上から覗きこんでいる。


手の下に感じる細かい砂粒の感触。


あたしは砂浜の上に、仰向けに寝そべっていた。


そこで一気に覚醒して、ガバッと上体を起こして叫んだ。


「門川君!? 大丈夫だった!?」


「ああ、無事だ。暴走した君の炎に取り囲まれた時は、一瞬本気で死を覚悟したが」


そ、そうだ。あたし、また力を暴走させちゃったんだ。


この海岸一帯、文字通りの火の海と化していたっけ。


ここから逃げられない彼は、生きた心地もしなかったろう。


うわあ、また彼の命を危険にさらしてしまった。


なんかあたしの行為って、助けるつもりが彼の寿命を縮めているだけな気がする。


「ご、ゴメンね門川君。なにしろもう、ストレスが溜まりまくっていたもんで、つい」


「いや、冗談だよ。炎は一応それなりに制御されていたようだ」


「え? それほんと?」


「ああ。君も少しは成長の兆しが見えているようだな」


そう言う彼の言葉に、あたしは首を傾げた。


へえ? あたし、無意識のうちに攻撃のターゲットを絞っていたのかな?


ぜんっぜん、そんな事をやった意識なんかないけど。


ていうかたぶんそれって、ただの偶然だと思うんだけど。


言えばまた門川君にネチネチ小言を言われるから、言わないけどさ。

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