神様修行はじめます! 其の四

「違うよ! そんなことない! 違うんだよ!」


痩せた細い体の感触が、あたしの腕を通して伝わってくる。


いきなり知らない相手から抱き付かれた子独楽ちゃんは、ビクッと怯えたように体を固くした。


でもあたしは力任せに、痩せた背中を抱きしめ続けた。


「お母さんは子独楽ちゃんを嫌ってなんかいない! あたし、知ってるもの!」


泣き声がピタリと止んだ。


恐る恐る、彼女は首を動かしてこちらへ振り向く。


信子長老にとても良く似た、涙で一杯の目が問いかけていた。


『それは本当なの?』 と。


救いを求めるその泣き顔が、辛かった。


あたしの目には、まるで信子長老が泣いているように見えて。


もう永遠に報われることのない彼女に、あたしはせめて手を差し伸べたかった。


せめて、あなたの本当の気持ちを子独楽ちゃんに・・・。


「うん! 本当の本当だよ!」


「お、お母さん、あたしのこと、嫌いじゃ、ない、の?」


「嫌いどころか、大好きだよ! その証拠にね、お母さんは子独楽ちゃんをかばっ・・・」


「小娘!」


絹糸が、あたしの言葉をそこで遮った。


その語気の強さに、あたしは飲まれて思わず声が引っ込んでしまう。


見れば絹糸と門川君が、揃って首を横に振っていた。


ふたりは無言のまま、『それは言うな』とあたしに訴えている。


そこであたしはハッと思い至った。


そうだ。あぁ、そうなんだ。


あたしは何を言うつもりだったんだろう。


『あなたをかばったから、あなたのお母さんは死んだのよ』

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