神様修行はじめます! 其の四
・・・言えるわけないじゃないか。
他者から見ればそれは確かに、愛に満ちた美談だけれど。
当の本人がそれを言われて、どうする?
自分をかばったせいで母親が死んだと知って、それが救いになる?
今の子独楽ちゃんに、さらに癒えない傷を背負わせることになってしまう。
言葉に詰まってしまったあたしを、子独楽ちゃんは期待に満ちた顔で見つめていた。
あたしの言葉を、今か今かと待ちわびている。
自分を救う言葉をあたしが言ってくれると、死んだ母親にそっくりの顔が信じていた。
そしてあたしは・・・
逃げるように目をそらした。
そして彼女の痩せた肩から、ゆっくりと手を外す。
言葉では言い表せない、重苦しい沈黙が流れた。
・・・見なくても、触れなくてもあたしには分かった。
子独楽ちゃんの希望が、奈落に突き落とされたことが。
あたしの不用意なひと言が、余計に彼女を絶望へ追いやってしまったことが。
「うぅ・・・・・・」
胸の奥から振り絞るような少女の泣き声が。
「う・・・わあぁぁぁーーー!」
激しい慟哭に変わった。
再び子独楽ちゃんは、母親に取りすがって泣きわめく。
その声は今まで以上に悲嘆と苦悶に満ちていた。
身を切り刻まれるようなその声を、あたしは唇を噛み、正座しながら黙って聞いていた。
ごめんなさい。ごめんなさい。
何もできなくて、ごめんなさい。
握りしめたコブシを震わせ、無力感に打ちひしがれる。
勝者であるはずのあたしは・・・こんなにも非力だ。