神様修行はじめます! 其の四
そして斃れた者は、どこまでも悲劇。
でも戦うという選択を自分の意思で選べた分だけ、まだ幸せかもしれない。
だけどそんな彼らに遺された者は・・・やり切れない。
愛する者が力及ばず散った世界で、否応なく生き続けなければならない。
あたしは、それを見ているだけ。
敗者が望んだものを与えることなど叶わずに、指をくわえて見ているだけだ。
絹糸が憐憫の目で、泣き狂う子独楽ちゃんを見ている。
「娘御よ、信子は決してお前を嫌ったわけでも、ましてや捨ててもおらぬ」
甲羅を経た者の声が、嘆き悲しむ者を静かに慰めた。
「ただ、この形でしか信子は生きられなんだ。 ・・・許せよ、母を」
それは真実。
でもそれを告げたところで、なんになるだろう。
永遠に置き去りにされた者が、このうえ、許しまで与えなければならないなんて。
そして遺された者にはそれ以外に・・・道も無いなんて。
母子の姿は、絹糸が千年もの永い間繰り返し見続けてきた悲劇そのものだった。
哀れみに満ちた金の目が、あたしの中にある異形の言葉を呼び覚ました。
『そんなもの、あたしゃ見たくないんだよ』
紅く澄んだ宝玉の目を持った、白く美しい異形。
あの心優しく、孤独なヘビの心情が胸にジリジリと滲みた。
その通りだ。見たくなんか無い。
こんなもの、誰も見たくなんかないんだ。