神様修行はじめます! 其の四
いつの間にか、もう日は傾いていた。
紫紺の空に浮かぶ雲が、不思議なほど鮮やかな朱色に染まっている。
合間から覗く黄昏の光が、今日の終わりの名残りを告げていた。
終わった・・・。戦いは終わったんだ。
でも、魔の海は変わらない。
日が昇ろうと、沈もうと。誰かが死のうと、遺されようと。
決して変わらず幻想のように美しく揺らめきながら、人々を誘う。
常世。それは届かぬこの世の果て。
その果ての砂浜に、命尽きた者がいる。
常世を変えるという、決して届かぬ望みに手を伸ばし、願い叶わず死んだ者が。
暗い空と、濃い朱色と、淡い金の光。
揺らめき変わらぬ魔性の海と、それを渡る冷たい風。
砂浜に横たわる体と、泣き濡れる者。
慰める事も叶わない、無力な勝者たち。
あたしはそれを見て聞いて、風にさらされ涙を流す。
流した涙はどこまでも、砂に吸われて消え去った。
どこへ・・・行くのだろう。
これほどたくさん流れた涙は、いったいどこへ届くというのだろう。
・・・・・・。
届く場所など、無い。
ここは常世。果ての島。
たどり着くことなど夢にも叶わぬ・・・
無情の世界なのだから・・・。