神様修行はじめます! 其の四
「考え直すなら今だぜ? お前、あのメガネについて行ったら間違いなく苦労するぞ?」
本気で心配顔の浄火に、ちょっと笑ってしまった。
うん、まあ、浄火の言う通りだよね。
苦労するっていうか、もうすでに苦労しまくってる状態だし。
門川君よりも、浄火の方があたしを大事にするってのは、ある意味本当だと思う。
浄火はあたしに、足で砂ぶっかけたりしないだろうしさ。
でも・・・・・・。
「分かってるさ。ちゃんと」
口を開きかけたあたしの言葉を、浄火が遮った。
「どんなに好きでも、本気で好きでも、世界で一番好きだとしても・・・」
穏やかな彼の瞳の奥に、一瞬、悲しみが揺らいだ。
まるで自分に言い聞かせるように、浄火は静かにささやく。
「それでも、叶わない恋がある」
「・・・・・・」
「分かっているのさ。ちゃんとな」
返す言葉が、なかった。
浄火の言葉が、あたしの心にとても重く響いて。
この言葉の前で何を返しても、上滑りにしか聞こえない気がした。
やっぱり涙が出そうになって、ごまかすために目を何度もパチパチさせる。
顔では泣けないから、代わりにあたしの心の奥が泣いていた。
「あの赤鬼が権田原の里でオレを襲わなかったのは、オレの中に里緒の力を感じていたんだろうな」
・・・・・・ああ、そういえば。
浄火があたしの手を引っぱって、強引に散歩に連れ出した時。
しま子は浄火を襲おうとして、やめてしまったっけ。
あの時すでにしま子は、異変を敏感に感じ取っていたんだね、きっと。