神様修行はじめます! 其の四
「・・・君。天内君」
自分の体が揺すられてる感覚に、目を覚ました。
「・・・うおぅ? あ、門川君・・・」
「こんな所で寝ていたのか? 典雅殿はもう帰ったぞ」
門川君があたしの肩を揺さぶっている。
寝ぼけた目をこすりながら、あたしはうぅーんと背伸びをした。
いっけない。早く帰らなきゃいけないのに、疲れてうたた寝しちゃった。
「あたし、どれくらい寝てた?」
「ほんの十五分程度だろう」
「マロさん帰ったの? 挨拶しそこねちゃったな。あれ? しま子と絹糸は?」
あたしはキョロキョロと土間を見渡した。
「絹糸は子どもと一緒だ。しま子は牛舎だよ。ところで君、岩さんを知らないか?」
「お岩さん?」
「僕達もそろそろ本邸へ戻るとしよう。岩さんに挨拶をしてから」
「そだね。お岩さんならハインリッヒを紹介しに行くって言ってたけど」
「外にはいないようだ。屋敷の中だろうか」
あたしと門川君はお岩さんを探すために、屋敷の中に入り込んだ。
とりあえずお岩さんの私室に向かってみる。
屋敷の奥に進むにつれて、外の賑やかさが届かなくなってくる。
広い中庭から吹く風が頬を撫でた。
庭に張り出している縁側を歩いていると、まるで庭を散歩してるみたいな気分になる。
春先の光に包まれた豊かな庭木たちが、伸ばした枝先を新緑の葉で飾っていた。
風の香りを嗅ぎながら角を曲がった所で、お岩さんの姿を見つけた。