神様修行はじめます! 其の四

「・・・君。天内君」


自分の体が揺すられてる感覚に、目を覚ました。


「・・・うおぅ? あ、門川君・・・」


「こんな所で寝ていたのか? 典雅殿はもう帰ったぞ」


門川君があたしの肩を揺さぶっている。


寝ぼけた目をこすりながら、あたしはうぅーんと背伸びをした。


いっけない。早く帰らなきゃいけないのに、疲れてうたた寝しちゃった。


「あたし、どれくらい寝てた?」


「ほんの十五分程度だろう」


「マロさん帰ったの? 挨拶しそこねちゃったな。あれ? しま子と絹糸は?」


あたしはキョロキョロと土間を見渡した。


「絹糸は子どもと一緒だ。しま子は牛舎だよ。ところで君、岩さんを知らないか?」


「お岩さん?」


「僕達もそろそろ本邸へ戻るとしよう。岩さんに挨拶をしてから」


「そだね。お岩さんならハインリッヒを紹介しに行くって言ってたけど」


「外にはいないようだ。屋敷の中だろうか」


あたしと門川君はお岩さんを探すために、屋敷の中に入り込んだ。


とりあえずお岩さんの私室に向かってみる。


屋敷の奥に進むにつれて、外の賑やかさが届かなくなってくる。


広い中庭から吹く風が頬を撫でた。


庭に張り出している縁側を歩いていると、まるで庭を散歩してるみたいな気分になる。


春先の光に包まれた豊かな庭木たちが、伸ばした枝先を新緑の葉で飾っていた。


風の香りを嗅ぎながら角を曲がった所で、お岩さんの姿を見つけた。

< 662 / 697 >

この作品をシェア

pagetop