神様修行はじめます! 其の四
探せば答えが見つかる確証があるのならまだしも、その手段は断たれてしまった。
明確な答えを持たない議論は過熱して、危険な火種になってしまう。
「一枚岩に亀裂が入りますわ。そうなれば、必ず敵にそこを狙われる」
お岩さんは凛と張った声で言った。
「そんな事には、決してさせない。この件は、わたくしの一存で闇に葬ります」
「はい」
「たとえあなたが本当に兄であったとしても、わたくしはあなたに当主の座は譲りませんわ」
「御意」
「もうこの件には触れませんわ。それでよろしいわね?」
セバスチャンさんは何も言わず、淡々と野菜を剥き続ける。
それは同意の意思表示だった。
ふたりが血の繋がった兄弟であるのか、そうで無いのか。
それを確かめる為に手を尽くす事はもう・・・二度としない。
なにも変わらず、ふたりはこのままずっと。
闇夜の空に浮いてたたずむ月のように、このままずっと変わらない・・・・・・。
縁側に寄り添うように並んで座るふたりは、そんな会話を交わしていた。
遠くに聞こえる牛の声。
可愛らしい小鳥のさえずり。
平和を絵に描いたような明るい春の陽射しの下の、楽園のように美しい、この里。
でもここは浮世の里。
あくまでも現実の世界。
楽園など、この世の中にあり得るはずもない。
あの海の果ての常世の島でさえ、辛いことばかりだというのに。
だから守らなければならない。
傷付けられることも恐れぬ人の手によって、この里は守らなければ継続できないんだ。