神様修行はじめます! 其の四
涙で視界がぼやけて、真っ直ぐ歩けない。
あたしは声が漏れないように、懸命に歯を食いしばっていた。
それでも泣き声が飛び出しそうで、奥歯が震えてガチガチ鳴った。
・・・セバスチャンさんが、お岩さんが望んだ言葉を告げたのかどうか。
それは分からない。
お岩さん以外の誰も、それを知ってはならないから。
かけがえのない大切な親友が苦しんでいる。
でもあたしにできる事は、願うことだけ。
どうかあの苦しみが少しでも癒される様にと、祈る事しかできないんだ。
そんな自分自身が情けなくて悔しくて、胸が灼けるように痛い。
切り裂かれる様に痛い。
千切られる様に痛い。
痛い。痛い。痛いよ。
鼻をすすり上げる音も立てられなくて、鼻水が垂れっぱなし。
それを気にする余裕も無く、ボタボタ涙を流して泣いた。
赤ん坊みたいに顔をクシャクシャにして、声を殺してあたしは泣き続けた。
門川君が、そんな見っともないあたしの手をギュッと握りしめる。
彼の指から伝わる冷たい優しさが、あたしの胸の灼ける熱さを宥めてくれた。
あたしも彼の手を力一杯握り返した。
手を伸ばし、それが届いて、触れ合える。
ただそれだけが、なんて奇跡であることか!
あぁ、これ以上を望むべくも無い。
無い・・・・・・。
あたしは門川君に手を引かれながら、ただ彼女の苦しみを思う。
そして泣きながら、この里を後にした。