神様修行はじめます! 其の四
世界の時間が一瞬、止まったかと思った。
顔の筋肉どころか、全身の筋肉が強張っている。
耳の奥がキーンと鳴って、ヒクヒクと唇が痙攣して、言葉が出ない。
一緒にいるのが、嫌になったんだろう?
裏切り?
ショックで呼吸困難になりそうになって、大きく大きく息を吸い込んだ。
吸い込み過ぎて・・・意識が薄れかけた。
「あ、いや、少々言葉が過ぎたかもしれない。今の発言は取り消そう」
あたしの顔色を見て門川君が訂正した。
そして、今まで以上に困惑した表情で何かを懸命に考え込んでいる。
彼は悩みを振り払うように首を振り、あたしの手を取ろうと手を伸ばしてきた。
「失言だった。だが僕も、今回のことは色々と・・・」
あたしは彼の手を、バシッと振り払った。
門川君が驚いた顔であたしを見つめる。
「天内君?」
あたしは答えなかった。
固く固く唇を結び、顔を背ける。
そしてそのまま、彼に背を向けて牛車に向かって一目散に駆けこんだ。
彼に・・・泣いている顔を見られたくなかったから。
座席に転がり込んで、お岩さんに思い切り抱き付き、涙声で叫ぶ。
「・・・出して! 早く!」